「ひとりじゃない」SHINGO☆西成が修徳学院を訪問 ー転石Vol.1

omura 2017/12/11

 

「それは『補う』ってことなんや。わからんヤツは辞書を引いてみ」

 

古くからの風情も感じさせる多角形の講堂の白い壁には、歴代院長の顔写真がズラリ。その前で席を埋め尽くす生徒たちの真剣なまなざし。壇上でこの言葉を述べているのは教師ではない。ヒップホップMC、SHINGO☆西成。

 

その日、「ラッパーが柏原市内にある施設を訪問する」という情報だけで筆者が招かれたのは、大阪府立修徳学院だった。恥ずかしながら、この施設に足を運んだのは初めて。さらに、ここで何が行われるのか、まったく知らされていない。

       
施設にいる子どもたちは様々な事情を抱え、グループ別の寮生活を行いながら、資格を持った夫婦とともに家庭的な日々を過ごしている。2013年からは院内において柏原市立桜坂小・中学校が設立され、義務教育も実施されるようになった。

 

 

修徳学院

▲修徳学院講堂(ライヴ前に撮影)

 

 

関係者は皆、後方の席につき、筆者もその時を待っていた。まず生徒が入ってくる。

 

「こんにちは!」

 

はじめに入ってくる女子たちが大きな声であいさつをしてくれる。まったく見ず知らずの私たちに対し、気持ちいいほどの礼儀正しさに驚いた。遅れて男子たちが入ってきて、皆が席についた。

 

 

SHINGO☆西成

▲当日のために配布されたフライヤー(主催:柏原祭り実行委員会)

 

 

 

DJとともに舞台にあがったSHINGO☆西成に、10人ほどの女子たちは嬉々とした表情を浮かべている。以前からその存在を知っているようだ。

 

「向こう三軒両隣」と、自ら長屋ラッパーと名乗るSHINGO☆西成は、長屋暮らしによる自身の生い立ちから「自分が今ここにいるのは親や近所の人たちのおかげ」と、冒頭から聴く者の心を鷲掴みにしてくる。

 

長屋と聞けば落語の世界にもあるが、SHINGO☆西成が選んだのはHIPHOP (ヒップホップ)ミュージックだ。HIPHOPはアメリカ・ニューヨークなどの都会のなかで移民系貧困層から生まれた文化。アートとともにラップやDJスタイルなどの音楽も生まれた。その根源は生まれ育った場所にある。

 

SHINGO☆西成は、自身が生まれ育った場所を名前に背負う。自らが西成のHIPHOPだと、独特の個性ある地盤で培ってきた生き様は、決して半端なものではないだろう。発する言葉が「強い」のだ。

 

「自分があるのは夜中こっそり涙を流していた親のおかげ」「今を精一杯生きる」「自分の考えを持つ」「他人を認める」

 

自然と体が踊らされそうなDJのリズムとともに、ポエムリーディング、巧みなライム(韻)による楽曲が披露されるなか、自身の経験とエピソードから生まれたいくつもの言葉が聴衆の胸を打つ。

 

 

→ 聴いていた子どもたちに起きた変化(次のページへ)

 

 

 

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