「ひとりじゃない」SHINGO☆西成が修徳学院を訪問(2)

omura 2017/12/11

前回からの続き

 

筆者が印象に残ったのは「切り花の一生」という楽曲だ。人を喜ばせる生き様を「切り花」に例え、「今あることの感謝の気持ちを大切にし、笑顔でいたい、笑顔で終わりたい」という刹那が、DJの刻むスローテンポのリズムとともに歌われる。

 

ふと前に座る女子数人の頬や耳のあたりが紅潮していることに気づいた。目に手をやり、明らかに涙を拭っている子どもの姿も把握できた。

 

ここには、様々な事情があって、10年や20年先など想像すらできない現在に立ち向かっている子どもが少なくない。強くて優しい言葉の連続に、素直な反応として表れたのだろうか。

 

「おまえらの文集すべて読んだ。だからおまえら皆に会いにきたんや」と語りかけるSHINGO☆西成。筆者もあとから子どもたちの文集に目を通したが、過去や現在の自分、家族に苦悩する言葉も目に飛び込んでくる。

 

 

文集「みかえり」

▲文集「みかえり  VOL.89」

 

 

それを「補っている」のが、修徳学院で共に暮らす寮長や教母であり、桜坂小・中学校の教員などの関係者でもある。大人たちも必死になって子どもたちの社会的自立へ向けた支援のなかで、日々たたかっているのだ。

 

ちなみに「優しい」という漢字の語源は、一説によると「悲しみに硬直してしまった人」を表す「憂」に寄り添う「人」を示しているとも聞く。

 

口調は激しいが、SHINGO☆西成の姿勢は誰にでも対等で優しい。もちろん、ここにいる大人たちもそうだろう。

 

 

講演終了後、扉から退出する子どもたちひとりひとりに言葉をかけ、SHINGO☆西成は自らの写真入りカードを手渡した。全員の顔をしっかり見つめ、声をかけ、握手を交わす。

 

「また来るからな」「おもろい眼鏡かけてるな」「ライヴに来いよ」

 

照れたり、笑ったり、言い返したりと、子どもたちそれぞれの反応がまた顔に出ている。

 

見上げると、そこには「みかえりの塔」が見守るように建っていた。かつて、「学院より逃げ出そうとした二人の子どもが、寮入りを告げる鐘の音を聞き、逃げるのを思いとどまった」ことから建てられた、修徳学院のシンボルである。

 

みかえりの塔

▲みかえりの塔(ライヴ直後に撮影)

 

 

その後の子どもたちは変な高揚を見せることもなく、素直に「楽しかった」「また会いたい」と口々に言っていたそうだ。

 

 

実は、このライブは企画段階から志ある大人たちのサポートもあって開催された。

 

「ひとりじゃないからな」

 

見えないところでも誰かが「補っている」。 その言葉が様々な意味を持っていた講演とライヴだった。

 

 

(コラム「転石」 by omura  敬称略)

 

 

 

 

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