包装工程で点字を打つ技術を開発(大青鉄工)

omura 2017/09/20

 

「視覚に障害のある方は、どのようにして商品パッケージの中身を確認するのだろう」

 

そのような疑問から、包装処理中に点字を施す技術を開発した企業が柏原市本郷にあります。ブリスター包装機をオーダーメードで手がける(有)大青鉄工(ダイセイテッコウ)へお話を聴いてきました。

 

包装パッケージに点字を

▲ブリスター包装。朱色で囲んだ部分に点字を打つ。

 

 

こちらの会社は親子二代で経営する鉄工所ですが、二代目社長の佐薙啓太郎さんは「決まった部品などを大量に造る鉄工所のイメージとは異なり、『生産現場からの相談・課題から、解決する仕組み(機械)を考え、設計から据え付けまでを行う』ことを業務内容としています」と、明言しています。

 

 

業務の主力はブリスター包装機の製造。これをオーダーメードで提供しており、大手・中小企業の国内や海外の工場に納品しています。

 

ブリスター包装とは、日用品や文具、化粧品などに使われ、中身が見える透明の状態でパッケージされているもの。商品を手に取って確認した上で購入されている方も多いのではないでしょうか。透明による訴求効果も高く、包装単価も安いために広く用いられています。

 

ブリスター包装機を手がけるなかで、独自の気づきがありました。記事冒頭における疑問。視覚に障害のある方にとっての商品確認です。果たしてこれがどのように行われるのか。実際に視覚障害のある方へのリサーチも実施し、包装工程のなかで点字を入れるユニットを開発しました。(※特許出願中)

 

包装パッケージに点字

 

現状において点字を入れるとなると、すべての包装工程が終了してから別行程によってパッケージに点字を入れることとなり、コストがかかります。しかしながら、こちらでは精度の高い包装機械の工程において点字を付加することによって、資材コストを上げることなく処理を行う技術を開発しました。

 

低コストにおける身近なバリアフリーとなるだけに、メーカーからも社会貢献のひとつとして注目が高くなっているところです。

 

会社を経営するなかで、このような点字付加へのアイディアの背景には、創業者で先代社長・晏道さんの妻(二代目社長の母)豊子さんのボランティアがありました。豊子さんはかつて本を点字で打つボランティアをされていたそうです。手で打つ点字器具が身近にあったことも、啓太郎さんの発想に大きく影響を与えました。

 

点字部分

▲パッケージの点字部分を包装工程の途中で行う

 

そこで、視覚障害の方に依頼し、点字が付加されたパッケージを実際に触れてもらうリサーチも実施。当事者から聴き取りを行い、開発に活かすための意見を集約しました。なかには、「これをぜひ社会に広めてほしい」との声もあがりました。

 

が、これらの声を企業側から一方的に発信すると「利益優先」の開発と受け取られやしないか、そんな懸念が頭のなかをよぎります。社長の啓太郎さんは「課題解決が前提」とし、こう述べます。

 

「できれば、視覚障害のある方を中心とした団体やグループなどから賛同の声が多くあがると、ニーズの確認ができたうえで、製品開発のやりがいがあります」

 

当事者の意見を聴き取りつつ試行錯誤を繰り返した結果、平成29年6月にはボランティア教育を進めるNPO法人から表彰も受けました。

 

大阪ボランティア教育所からの表彰状

 

今後の課題としては、視覚障害のある方の点字識字率は約10%という状況(厚生労働省調査)があります。すべての人々に点字が広まっているわけではありません。点字を用いない層には後天性の方が多く、現在ではスマートフォンのアプリなど、点字以外の何らかの方法で情報を読み取ろうと工夫をされている方もいます。

 

さらに、点字があったとしても、例えば歯ブラシが硬いのか柔らかいのか、それとも普通なのか。細かな情報までは記述されていないことも現状です。

 

そのため、点字を目印としてパッケージの裏にQRコードなどを付加することによって、商品情報の詳細が把握できるような提案にも、同社では力を入れています。

 

(有)大青鉄工

▲大青鉄工の看板。鉄は「かねへんに矢」と表記。

 

創業者の晏道さんは「ものづくりの業界も人員減少と高齢化で大きな問題を抱えている」と口にします。

 

かつては職人的な存在が現場にいて、その人がいればすべての工場の製造が回るようになっていました。が、技術に長けた人が次々と引退し、工場独自の技術の後継がなされないまま新たな人員を雇用すると、培ってきたノウハウの伝承が途絶えてしまう。一部では工場自体が稼動しない状況も生じています。

 

このような課題解決も含め、大青鉄工では「時短化設計研究所」という名称も用いて、先述したような「生産現場へのコンサルティング」も含めた事業を展開しています。

 

「現状だけを見て対処するのではなく、10年20年、それ以上先を見据えた提案と開発が重要なんです」

 

長く生産現場に身を置いてきたからこそ口にできる、実感のこもった言葉。どこの業界においても通じる話ではないかと考えさせられた、今回の取材でした。

 

 

時短化設計研究所
(有)大青鉄工

〒582-0001 大阪府柏原市本郷4-128-2

TEL. 072-971-1505

http://www.daisei-ironworks.co.jp/

 

 

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