株式会社九櫻 三浦正彦 代表取締役社長にインタビュー
株式会社九櫻 三浦正彦 代表取締役社長へのインタビュー。前編では創業当時からの歴史をお聞きしました。2018年に創業100年を迎えた九櫻。この先をどのように見据え、新たな挑戦に立ち向かっているのか。後編では、将来への視点と企業経営の姿勢などを伺いました。
● 今では「世界の九櫻」と呼ばれるようになりました。
九櫻のマークと名称は初代社長が考案したものです。楠木正成の家臣だった恩智左近という武将の紋所から由来しています。
読みは「くざくら」ですが、アルファベットでは「KUSAKURA」。ローマ字表記のブランドロゴを採用し、国花の桜の頭文字「S」を取り入れて「KUSAKURA」としました。「S」は帯の形も表しています。
▲「S」マークは世界で認知
世界へ通じる転機となったのはオリンピックですね。昭和39年(1964年)の東京五輪において、日本選手団の依頼で柔道衣を提供したのがきっかけでした。令和6年(2024年)パリ五輪では選手の着用率が3割、87カ国となっています。
▲社内に掲げられた世界地図。パリ五輪の選手が着用した国が示されている
● 世界への広がりが感じられるエピソードがあればお聞かせください。
九櫻の名が外国の方に認知されているのを、最近も強く感じます。突然、外国人観光客が本社を訪れるんですよ。ほとんどが九櫻の柔道衣を理解した上で来られています。
● 100年の歴史ある企業として、この先へ向かう道とは。
おかげさまで2018年に創業100周年を迎えました。次の100年を目ざすためには同じものづくりだけをしていては持たない。将来の日本の少子化による人口減は、国内の柔道選手数にも影響します。今後の状況を念頭に新しい手を打つのが急務だと、100年を迎えた際に考えたのです。
▲「次の100年はこれまでにない新たな手を」
結果、「伝統ある刺子生地を用いてこれまでにない商品をつくる」という考えが浮かびました。
2019年のことです。インテックス大阪において、スポーツとライフスタイルをテーマとした展示会があることを知りました。そこで、九櫻の刺子生地で制作した帽子やバッグ、ハンモックを展示し、新たな道をひらいたのです。
2020年2月には繊維事業部を立ち上げることとしました。繊維事業部では、刺子生地を用いたバッグやTシャツ、サウナハットなどさまざまな展開をしています。
▲今町にある同社繊維事業部(九櫻刺子)にて
● その他に今後の展開があれば教えてください
2024年11月に着圧式トレーニングウェアの新ブランド「ザグラス」(https://xaglass.com/)を立ち上げました。
着用するだけでも筋力が強化するような、負荷のかかるトレーニングウェアです。姿勢の改善にもつながり、筋肉トレーニングにも有効。スポーツ全般に使えるウェアとして作ったもので、九櫻の新たなブランドとして広くスポーツ界へと展開していきます。
● 国際基準における創意工夫も聞き、多くの社員や職人の方々の努力があると感じました。三浦社長の企業経営において大切にしている言葉があれば教えてください。
経営理念として、「統制のとれた組織社会を形成し、企業の安定発展を図り、未来に通じる企業体として存続すること」を掲げています。
▲「未来に通じる企業であれ」と三浦社長
また社訓として、「一日一進」「実行」を示しています。
「一日一進」には、「日々進歩する現在、人間の感性、価値観のなかでは、現状に甘んずることは退化である。プロとしての精神を持ち続け、あらゆる分野における後継者を開発育成し、出番を与えることが管理者としての使命であり、出番を求めることが一般社員の努めである」という意味を込めています。
「実行」はその名のとおりです。「言ったことは必ず実行する、依頼されたらすぐに実行する、思い立ったら、小さいことも嫌なことも、先手を打ってすぐに実行する。実行すれば必ず結果は出る。ただ考えているだけでは何も起こらない」。
▲一日一進、実行こそが大切
● 私自身(聞き手・大村)も重く受け止めます。
私が50代で社長に就任した際、会社の平均年齢は47歳でした。若い世代を採用する努力もしています。若い世代は社内にあらたな活力を生み出します。ただし、当然ながら人生経験は少ない。
時の流れや世代によって考え方も変化する世の中ですが、「一日一進」「実行」の言葉を胸に、現代社会へと立ち向かってほしいですね。
聞き手・構成:かしわらイイネット 大村 吉昭
撮影:natully photo(ナチュリーフォト) 萩 沙織















