Column

柏原にあったレコードショップアライのレコ屋袋を求め、難波へ

ある日、Twitterでひとつの投稿に目が留まりました。

 

難波にある中古レコード店が「#街のレコ屋袋」として、オガタ通り商店街に2012年まであった「レコードショップ アライ」の紹介をしていたのです。

「JR柏原駅から近鉄堅下駅を結ぶ〜」と商店街の細かな説明もあるので、柏原をご存知なのかな?と感じ、思い出ある店なのでレコード袋をいただけないかと、12月24日に投稿主を訪ねました。

難波なんてもう久しぶりなので、道に迷います(汗) 訪れたのはサウンドパック本店

 

サウンドパック本店
▲サウンドパック本店

 

1階が中古CD、2階が中古アナログレコード売場となっています。投稿主はこちらの2階に。担当の安田さんにお聴きしました。

サウンドパック本店 2階 アナログレコード売場
▲2階アナログレコード売場にて。担当の安田さん

 

安田さんによると、レコードを買い取った際、レコード袋やチラシなど当時の様子を感じるような物が出てくる。

「レコード袋ごと引き取ると多く溜まるので、結局は捨てるんです。でもなんか残しておきたくて」

と投稿にしたのが、「#街のレコ屋袋」のきっかけ。実際、筆者が問い合わせた際も「本来は捨てるのですが、では取っておきますね」と返信があって、何とか入手できたのでした。

 

レコードショップアライ
▲レコードショップアライのEP盤袋。オガタ通り商店街の文字が記されている

 

筆者としては、レコードショップアライに思い入れがあったのと同時に、投稿主の安田さんにも関心を持ちました。

「レコ屋袋を捨てる」と言っても、その前に店舗が存在しているかを調べる。アライの場合、若干の土地勘もあったので「あの線路近くの商店街にもレコードショップがあったのだ」と把握し、商店街の説明まで入れた投稿となりました。

時に、今も存在する店舗を知ります。すると安田さんは実際に足を運び、お店の人と話しこむこともあるそうです。

かつて編集の仕事をしていた安田さん。音楽知識はもちろん、当時の文化背景まで伝える綿密さ、店舗まで駆けつける行動力には、ご本人ならではの感性や考えが大きく影響しているようにも思えます。(他にも「#レコードの隙間から」という投稿も興味深いです)

▲この投稿の後に来た売り主が、実際のレコード店だったという投稿も

 

最近、アナログレコード再注目の動きがあります。あくまで新譜ですが、2012年には売上6億(円)だった市場が2020年には21億となりました。

その状況を口にすると、安田さんは「とんでもない」とキッパリ。

新譜CDの売上は2012年の224億をピークに下降を続け、2020年には126億。それに対し、ネットによるダウンロードやストリーミングは2020年で782億まで上がっています。

「比較すると桁が違いすぎますよ」と説明していただきました。

こちらの店舗はもともと1階のみが販売で、2階は倉庫でした。次第に1階では収まりきらず、2階をアナログレコード専用としたそうです。CDやレコードを手離す人がそれだけ多く存在する表れです。

 

サウンドパック本店
▲日本の歌謡曲、ロックのほかジャズコーナーも豊富

 

さらに衝撃を感じるニュースがありました。

「昔から梅田に存在する大手CDショップ(支店)営業終了のニュースには驚きました。販売業界にとって危機感の大きな出来事ではないでしょうか」

ネットや動画サイト主流の時代とは言え、モノの温かさ、愛着が失われつつある。それでいいのか。

 

安田さんには、「森本書店」という不定期の冊子を教えていただきました。艶のあるしっかりとした紙を用いた装丁で、開けるとSPレコードからの古い歴史を並べ、詳細を述べた一冊の史料となっています。住之江区の粉浜商店街でイベントも企画されているそうです。

森本書店
▲「森本書店」という冊子。フリー(0円)とは思えないほどのできばえ

 

話を終えて、筆者は音楽は聴かずにジャケットを見て買う、いわゆる「ジャケ買い」を。

大きな雲へ向かって飛び立とうとする人の姿を表現したアートワークに惹きつけられました。裏面を見ると、この地面の端は断崖でぽっかり浮かんだ孤島のようになっています。

後から調べると、Manfred Mann’s Earth Band というバンドの1978年発売「Watch」というアルバムでした。

「いいジャケットですね」

安田さんにレジでそう言っていただき、お店を後にしました。アライの袋とともに。

Manfred Mann's Earth Band
▲サウンドパックさんのレコ屋袋はこんな感じ