加工された靴型にそれぞれの色を塗る。これはかしわら芸術祭のひとコマです。
かしわら芸術祭は10月30日から11月7日まで開かれ、柏原市の6つのゾーン、10のサテライト会場にはのべ4,300人の来場がありました。(主催者発表)
なかでも人気のあったワークショップのひとつが、11月3日にオガタ通り商店街・旧ヤマニシデンキで行われた「靴型に好きな絵を描く」でした。午前、午後の部ともに定員各20人が満席に。
このワークショップを企画したのは柏原市在住の画家、森山陽介さん。
▲今回のワークショップを企画した森山陽介さん
森山さんは東北芸術工科大学美術科日本画コースを2013年に卒業。その後は東京銀座のギャラリーでの個展、大阪市江之子島美術館の国際交流展などを経て、2016年には日展(日本美術展覧会)に入選しました。
以降、2017年には月刊美術7月号で作品特集の掲載、2019年に第87回独立展で初入選など、その画風が認知されつつあります。
今年(2021年)は国立新美術館など全国5カ所で行われた第88回独立展でも入選し、11月に大阪市立美術館で作品が展示されました。
▲11月に開かれた第88回独立展でも入選
森山さんの作風は写実的な日本画です。ただし対象をそのまま描くのではなく、自身のフィルターを介し、独特の世界観に変貌した絵画となっているのが特徴。
野外で写生した素描をもとに夜中ひとりキャンバスに向かっていると、ふと「降りてくる」ものがある。そのイメージが作品に焼きつけられ生まれ変わる瞬間が、森山さんにおける絵画の醍醐味。大きさだけでなく細部まで描かれた画力は、作品の存在感を増しています。
▲ 第88回独立展入選作品の「小太郎落とし」
今回の「靴型に好きな絵を描く」ワークショップは、あらかじめ針金でツリーに吊られた靴型を切り離すところから始まりました。
「靴型を切り離す瞬間から、このワークショップ自体が『作品』でした」と森山さん。
参加者が気になった靴型を選び、森山さんとスタッフがペンチで切り離していく。他のブースが賑やかな会場設営でありながら、その一瞬は緊張感に包まれた静謐さも感じられる光景でした。
▲最初はツリーに吊られていた靴型
あとは、参加者それぞれが思い思いに色をつけ、デザインしていくだけ。指で絵の具をつけて流れをつくる人、筆を使って模様を描く人、色の使い方もそれぞれ異なります。大人から小さな子どもまで好きなように靴型を描きました。
▲指で流すように描く人も
柏原市の参加者からは「絵なんて描けるかしら、と思っていたのですが、思い思いに皆さんが夢中に取り組まれている様子に、自然と参加することができました。世代問わずともに楽しめる場所は、嬉しくて賑やかであたたかい気持ちになりました」と、ワークショップ全体を通しての感想が聞かれました。
終了後に並べられた靴型の数々は鮮やかな光景に。
「今回のワークショップは初めてでご迷惑をかけたかもしれませんが、私自身にとっても意義ある機会となりました」
自らの得た感動を忘れることなく追求し、森山さんの作家活動は続きます。これからも注目のアーティストです。
▲展示された参加者の靴型とともに。森山さんの後ろにあるのは第87回独立展に入選した「視線の行方」
その他、「かしわら芸術祭」の模様はかしわらイイネットFacebookページの写真アルバムに掲載していますのでご覧ください。