2024年10月2日より募集を開始しました!
現在、日本遺産として話題の亀の瀬に、どんな石があるのだろう?
地学の分野で学ぼうと、かしわらイイネットの独自企画・イイネットのサロン「亀の瀬で探そう、きらり光る石」を3月12日に実施しました。
講師は自然環境研究オフィス代表の柴山元彦先生。「海辺や川原のきれいな石の図鑑、宮沢賢治の地学教室(いずれも創元社)」などの著書があり、多忙なスケジュールを過ごす先生に昨年末からお願いし、実現の運びとなりました。
▲石を手に説明する柴山先生
参加者は15人。内12人は柏原市外からの石好きの人たちの来訪です。中には神戸からわざわざ駆け付けた方も。お子様が石に興味がある、という家族も多くいらっしゃいました。
朝10時にJR河内堅上駅へ集合し、JR関西本線(大和路線)沿いに続く青谷から峠(とうげ)地区へ続く道を散策しました。
他市からの来訪が多く、徒歩の時間が長いことから、「歩きながら、ちょっと違和感を覚える地点はないか気をつけてください」と大村からクイズも。
▲河内堅上駅から峠地区までの小道を歩く
小道を抜けると亀の瀬の広々とした光景が広がり、亀岩が見られるフォトスポットがいつの間にかできています。堅上駅から20分以上歩いてきたので、象徴的な亀岩を見ていただきながらしばし休憩。
▲小道を抜けると眼前に広がる亀の瀬の風景。亀岩はこの下(写真はあらためて追加掲載・汗)
ここで偶然、大和川河川事務所の平松さんに出会いました。「地質に関するワークショップを実施されると聞いて、見学したい」とのこと。心強い協力を得て、あらかじめ予約していた亀の瀬資料室を見学します。
▲かしわら手ぬぐいWEEKの直前とあり、許可を得て亀の瀬にちなんだ手ぬぐいを掲示
柏原市外からの参加者が多かったことから、最初にイイネット大村より資料室にある地図を用いて、亀の瀬の場所から説明しました。
現在のJR大阪駅とJR奈良駅の位置から考えていただき、その間にある生駒山系南裾の大和川沿いにあるエリア、山を抜けないで通るには古代から交通の要所でありながら、地すべりの難所でもあったこと。
近代に地すべりのあった時期も説明し、大和路線の線路の位置が変わったこと、皆さんが歩いてきた鉄橋が川に対して斜めに架けられた特徴(それがクイズの答え)などをお話しました。
▲大村から現在皆さんが立っている場所から説明
その後、講師の柴山先生より
「このあたりの大和川は生駒山系より先に流れていた川で、普通は山から水が流れて川になりますが、ここは違います。川が山の隆起を抑えています。結果的に山脈を横切るように見える川は全国的にも珍しい。地学の観点から貴重な場所に皆さんは今来ています」
と、大和川の成り立ち、亀の瀬の地学的に稀有な場所であることを説明いただきました。(大和川の「先行谷」については、過去のワークショップでもご説明いただきました)
▲地すべりの要因と地形の変化、大和川と山々の成り立ちを説明する柴山先生
柴山先生は、地すべり対策工事のさなかに学生時代の実習で足を運んだことがあるそうです。あらためて先生からも鉄道の位置変更、川向こうにある国道25号線の隆起なども説明。花崗岩質の生駒山系にある粘土質の土壌と地下水が要因となった、地すべりの仕組みなどを説明いただきました。
平松さんにも協力を得て資料室をひと通り見学し、いよいよ皆さんお待ちかねのワークショップへ。
▲参加者の要望に快く応えていただき、地すべりが起きた仕組みを模型で説明する平松さん
大和川北の生駒山系は約1億年前の花崗岩(地球内の地下でマグマがゆっくり冷えて固まってできる石)で成り立ち、南側からは約1500万年前の火山岩(地表でマグマが急に冷え固まってできる石)が噴出しています。その間に挟まれているため、柏原の大和川付近では双方の特徴ある石が見つかります。
▲柴山先生から節理(岩石体に生じる割れ目が隆起)の存在も指摘
「花崗岩や安山岩(あんざんがん)には小さな鉱物(ガーネットなど)が含まれているので、探してみてください」
「二上山から噴出したかんかん石(サヌカイトやサヌキトイドで、音がカンカンと鳴るのが特徴)も見つかります」
「黒っぽい石には玄武岩があるので、そこには小さなかんらん石(緑色が特徴のペリドット)があることも」
など随時説明を受け、休憩を取りながら、皆さん河川に広がる多くの石から探し回ります。
▲サヌカイトはかんかんと音が鳴るのが特徴。石器としても使われ紙を切ることができると説明
亀の瀬の河川では、ごつごつとした大きな石があるのが特徴。皆さん足を取られながらも、黙々と下を見ながら探す姿は印象的でした。
▲石がかなりゴツゴツしているのが特徴
幸い天候に恵まれ、お子さまも楽しそう。途中、持参した柴山先生の著作本にサインしてもらう姿も印象的でした。
▲途中で子どもからサインを頼まれる柴山先生。
先生に確認していただき、ガーネットを探しあてる人が続出。
▲柴山先生に確認を求める皆さん
ほかにもサヌカイト、ペグマタイト(さまざまな鉱物の結晶や大きな石がかたまっているのが特徴。地質によって含有する鉱物が違う)、正珪岩(石英質の堆積岩)、菫青石(きんせいせき・変成岩のひとつで、純度が高ければすみれ色の別名アイオライト)、玉髄質(石英のかたまりで不純物が入りこむことも。風化している)、そしてかんらん石(ペリドット)を探し当てた子どもも。
▲大村が見つけた角閃岩(角閃石のかたまり)だけ掲載
※その他の写真については、柴山先生のご意向も踏まえ、サイトやSNSでは掲載しません。ご了承ください。
今回は石探しがメインテーマ、かつかしわらイイネットの自主企画であり、実施した土曜日は本来ボランティアガイドも不在のため、トンネル見学は行程に入れていませんでした。
しかし、大和川河川事務所の平松さんが「地学的見地のある皆さんにもぜひ見ていただきたい」と、急遽、地すべり対策のトンネルの一部を見学させていただきました(希望者のみ)。
特に工事中に発見された明治時代の鉄道トンネルに、皆さん興味津々。煉瓦づくりの特徴、当時の状況が残っていることに大きな関心を持たれたようでした。
▲レンガでできた明治の鉄道トンネルを平松さんから説明
かしわらイイネットでは皆さんの感想やご意見も取り入れ、また機会があればこのような企画を実施してみたいと考えています。皆さんありがとうございました。
河川に近づく場合は、足下や急激に変化する天候、上流の増水に注意してください。
最後に、参加された方々の感想を一部掲載します。
柴山先生の講座は何度か参加させていただいています。
今回は、資料館やトンネル見学もできて、充実した内容だったと思います。ガーネットは見つけやすいですし、見つけられるとテンションが上がるので、今回の内容で学校の長期休みなどにリピート開催されてはいかがでしょう?喜ばれると思います!
当日は、サヌカイトを見つける事が出来て、良かったです。トンネルも見ることが出来て、大満足です。
先日は、貴重な体験をさせていただいてありがとうございました。なぜ立派な工事がされたのかよくわかりました。また、歴史的にも重要なところなのだと思いました。
憧れの柴山先生に会えて、サインまでもらえたと子どもが喜んでおります。また、岩石採集でも、かんらん石、輝石、ガーネット等が見つかって、大変有意義な時間を過ごせたみたいです。次回もぜひ参加したいと言っております。ありがとうございました。
初めて亀の瀬を見学しました。トンネルも見学できて本当に良かったです。遺産としての価値は充分にあります。
ちなみに、この4月に柴山先生の新著「川や海で子どもと楽しむ きれいなだけじゃない石図鑑」(だいわ文庫)が発刊されました。
4月15日現在はまだですが、宮脇書店大阪柏原店でも取り扱いの予定ですので、入荷した場合は追記致します。(写真は在庫の「宮沢賢治と学ぶ宇宙と地球の科学」(創元社))
※この記事に掲載している情報は2022年3月当時の内容です。ご了承ください。
2012年に「かしわらイイネット」を設立。地域の情報発信をはじめSNS講座講師、各種講座の主催も担う。趣味は音楽、天然石探しなど、いずれもロック。