「どのぶどうを採ったらいいかな?」
ぶどうの房を見ながら選ぶ姿が、真夏のぶどう畑で見られました。ぶどう狩りではありません。農家の収穫を支える人たちの作業風景です。
8月初旬、強い日差しが照りつける猛暑のなか、10人ほどの人たちが収穫作業を行っていました。
これは、昨年から始まった「100年つむぐプロジェクト」。遊休農地や高齢化の課題を抱えたぶどう農家が、食用から醸造用に生産を転換し、最も負担となる収穫を、企業ボランティアや福祉事業所が就労支援として支えるものです。
昨年は、皆さんの手で収穫されたぶどうから「つむぐワイン」という白ワインが醸造されました。
※大阪府の農家の現状データは下記をご参照ください。
収穫前の7月15日には、参加を検討する企業・福祉事業所へ向けた事前説明会を実施。大阪府中部農と緑の総合事務所、一般社団法人エル・チャレンジ福祉事業振興機構、カタシモワインフード株式会社による合同の説明会でした。
▲ぶどう生産から醸造に至るまでを説明するカタシモワインフード株式会社 高井麻記子さん(奥・中央)
それぞれの立場から、収穫に適したぶどうの見分け方、サビ(傷んだ実)を取る作業、はさみの使い方、暑さ対策、収穫後の注意事項、醸造までの流れなど、詳しい説明がありました。
▲収穫の時期や目安を説明
説明会の内容を踏まえ、企業・団体が参加申し込みを決めたあと、今回の収穫作業に臨んだのです。
企業からは、新田ゼラチン株式会社、株式会社アド近鉄。福祉事業所では、つるみの郷(大阪市)、夢工房くるみ(柏原市)、たんぽぽ(柏原市)、大阪アグリバイオ(大東市)、就労支援センター浅香山(堺市)、わくわく富田林(富田林市)と今年は2企業、6福祉事業所の参加でした。[順不同]
収穫期間は7月29日、8月1日〜3日と決定。柏原市内の2つの農家が所有する畑で、天候も考慮しつつ、分散した日程での収穫作業が行われました。
▲醸造用に生育されたデラウェア。6月末の猛暑を経て育てられた
ぶどう農家によると、今年のぶどうは「6月下旬からの記録的な猛暑の影響が多少あったが、なんとか収穫できる状況まで生育できた」と、天候に左右され苦労した声も聞かれました。
8月2日午後は、安堂にある畑で柏原市の夢工房くるみが担当していました。同事業所では、8月9日にも別の醸造用ぶどう畑で収穫を行いました。
▲夢工房くるみの皆さん。収穫からサビ取りまで1時間ほどの作業となった
8月3日午後に訪ねた収穫場所は、円明の農家が所有する畑。
八尾市の新田ゼラチン株式会社が担当していました。同社は大阪府のアグリパートナー制度で協定を結び、農業への企業ボランティアとして昨年に引き続き参加しています。尾形浩一社長をはじめとする10人以上の会社関係者が真夏の暑さのなか、収穫作業を行いました。
▲斜面のある畑で収穫する新田ゼラチン株式会社の皆さん
▲尾形社長も自ら畑に入って収穫
「昨年より暑さが厳しいですが、『大阪ぶどうの歴史を絶やさない』という思いに共感し、今年も参加しました」
と、尾形社長自ら汗をかき、収穫作業にいそしんでいました。
福祉事業所からは、富田林市にあるわくわく富田林。こちらも昨年から参加している事業所です。
▲サビ取りを行う、わくわく富田林の皆さん
その他の企業・福祉事業所も含めた全4日間の総収穫量は1148.5キログラム。
今年はこれをもとにスパークリングワインが醸造されることとなりました。スパークリングワインは瓶内二次発酵(一度アルコール発酵させた後に酵母などを入れ、二度目の発酵を瓶内で行い、発生した泡がワインに含まれていく)を行うため、醸造に時間を要します。完成予定は来年(2023年)5月頃。
かしわらイイネットでは、今年も「100年つむぐプロジェクト」の今後も取材。最新情報を順次掲載していきます。
2012年に「かしわらイイネット」を設立。地域の情報発信をはじめSNS講座講師、各種講座の主催も担う。趣味は音楽、天然石探しなど、いずれもロック。