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亀の瀬地すべり対策施設と明治の鉄道トンネルを見学

亀の瀬

 

(※2016年9月2日のリポートです)

大和川が奈良盆地から大阪平野に向かう渓谷部にある亀の瀬。近世の舟運を含め、古くから大阪と奈良を結ぶ交通の要衝の地域でした。

生駒山系の南端にあたる地形もあって、古くから「地すべり」が起きることから、万葉集では「畏の坂」と呼ばれる難所でもありました。

 

最近の記録を見ても、明治36年、昭和6〜8年、そして昭和42年に発生。直前の昭和37年から国の直轄事業として建設省(現・国土交通省)が大規模かつ先進的な工事を実施し、その努力によって地盤が安定するようになりました。24時間体制での監視は継続されるものの、大規模な工事は完了しています。

 

亀の瀬

 

国土交通省大和川河川事務所では、地すべりの要因、対策工事の詳細を広く理解してもらおうと、不定期に「大人の社会見学」を実施しています。

また、この工事用トンネルの掘削中に偶然発見された、明治時代の旧大阪鉄道亀瀬隧道(煉瓦製の鉄道トンネル)にも入ることができます。
(※普段はすべて非公開)

今回、かしわらイイネットではその見学会を企画。平日にもかかわらず15人の参加があり、柏原市文化財課に講師の派遣要請を依頼し、実施の運びとなりました。

 

まずは、資料室において亀の瀬の歴史、工事内容をDVD上映。

亀の瀬

 

地すべり発生当時に居住していた住民の人たちへのインタビュー、昭和40年代頃からの貴重な映像を織り交ぜながら(当時、外国からも視察があった)、概要の知識を得ます。

 

その後は展示室に場所を移し、大和川河川事務所調査課・細川さんから詳しい説明を。

 

亀の瀬

 

はじめに大和川や奈良盆地・大阪平野全体、生駒山系から見た亀の瀬の位置を学びました。大和川が堰き止められてしまうと大阪・奈良双方にも影響を及ぼすことになります。

 

明治や昭和に起きた地すべりにおける貴重な資料や写真とともに、昭和6〜8年に起きた地すべりで、大和川の流れや当時の国鉄関西本線のルートも迂回することになり、国道25号線が隆起した事実も。(今もその隆起の名残が)

 

亀の瀬

どうしてこのような地すべりが起きたのか、この地域は、粘土層などのすべりやすい地層の上に土塊があることなどを教わります。

亀の瀬
亀の瀬

 

分析の結果、抑制工(地形や土質、地下水などの状態を変化させる・排除する)、抑止工(日本最大の直径6.5m 世界最大級の最深96mの鋼管杭などを打ち込むことで抵抗力をつける)などの対策工事の概要を学びました。

 

亀の瀬亀の瀬

 

資料室見学のあとは、実際に工事トンネルの中へ。ここからが体験見学となります。(繰り返しになりますが、現在、地すべりは対策工事の結果によって、集中監視システムの監視下にあるなかで、土塊量の変移はほとんどなくなり、安定しています。)

 

亀の瀬

 

排水トンネルのなかには集められた地下水が流されており、ひんやりとした内部。日中の最高気温が36度でもあった残暑厳しいこの日でしたが、エアコンでも入っているような涼しさです。(冬は逆に密閉されていて暖かいそうです)。

 

資料室で説明を受けた工事内容を体感。

亀の瀬

 

途中で見上げると存在する集水井からは、多くの地下水が上から降ってくることに驚きの声も上がっていました。

亀の瀬 亀の瀬

最後に、排水トンネル工事の掘削途中で見つかった、明治時代の鉄道トンネル(亀瀬隧道)を見学。これは旧大阪鉄道(国鉄・JRの前身)が煉瓦などを用いて作ったトンネルです。

※工事用トンネルの内部にあり、一般公開はされていません。

亀の瀬

 

当時は他にもトンネルがあったのですが、その大半が地すべりで埋まってしまいました。その影響で現在の大和路線の線路の位置も変わっているのです。(鉄橋も川に垂直ではなく斜めに架けられています)

ここでは柏原市文化財課石田さんも加わっていただき、当時の鉄道の歴史とともに、その煉瓦構造の仕組み(煉瓦の長手と戸口の部分の配置による積み方によって、側壁部と上部にあるアーチの構造が違うこと)も教えていただきました。上部にある黒い部分は蒸気機関車の煤(すす)であること、発見の過程なども説明。

 

亀の瀬 亀の瀬

皆さん、現代的な構造物のなかから突如現れた煉瓦のトンネルに驚かれていました。現在、こちらのトンネルは柏原市の文化財に指定されています。

亀の瀬は、これまでも柏原市の地域資源として注目されてきた場所でした。そこに、NHK「ブラタモリ」で代表されるようなメディアでの発信の影響もあって、地層、工事内容などに、注目が集まっています。

7月8日に開催された奈良県主催の「山の日・川の日」見学イベントには定員一杯(90名)の見学者が来訪。

 

亀の瀬

「インフラツーリズム」とも呼ばれる、これらの見学や地域づくりが、国土交通省において全国的に力を入れています。大和川河川事務所では、今後も新しい見せ方を行なっていきたいと、資料室もリニューアルしました。

今回の企画のような少人数での見学は平日のみ事前申込と日程調整によって、随時受付がされています。ご関心のある方は一度足を運んでみてはいかがでしょうか。

(※2016年9月1日に実施した内容を再編集しました)