Report

学生が届ける被災地の思い、被災地への歌声【大阪教育大学有志の活動】

とどけよう!!みんなのこえ!!

東日本大震災から今年で6年。他人事と思えない気づきから、新たな行動が生まれます。

ここでは、今まで聴き取りしてきた、大阪教育大学の学生が展開する2つの活動をご紹介します。

 

1つは「とどけよう!!みんなのこえ!!」

とどけよう!!みんなのこえ!!

 

学部を越えて集まった音楽コンサートを毎年実施しています。

今期の代表である北尾さん(同大学大学院教育学研究科音楽教育専攻)によると、「被災地で常に活動することはできないが、学生が普段生活する関西圏から、私たちのそばにある音楽によって何か伝えることができないか」と考えたのがきっかけ。

自らも学生数名とともに宮城県の被災地などを訪問。趣旨の理解と活動への協力を得るために柏原市教育委員会へも直接足を運び、市内各小学校の児童に対する合唱への参加募集を行いました。

 

とどけよう!!みんなのこえ!!

各演奏者による選曲、子どもたちとの全体練習も重ねるなか、今年度も 11月の学園祭(神霜祭)において4回目のコンサートを実施するに至りました。

 

被災地の現状を発信する上で心強い存在が学内にありました。独自に被災地で取材を重ねてきた写真サークル「FILM」です。

film

代表の衣笠さん(同大学 特別支援教育教員養成課程)にお聴きしました。「FILM」は 2013 年 7 月に「大阪で被災地の状況や人々の状況を伝えたい」と結成されました。

 

昨年8月、全員でお金を出しあい、2泊3日で東北の被災地への取材を敢行。3つのグループに分かれ、それぞれが市民団体や各自治体、一般市民を対象に聞き取りを行い、得た情報を皆で共有し、理解を深めました。

 

津波の到達地点に桜を植樹し、後世へ伝えようと活動する認定NPO 法人「桜ライン 311」からは、自然災害をどのように『自分事化(じぶんごとか)』するか、災害直後から変化していく被災地への意識を続けることの重要性を知りました。

震災後に防災士となった人には、日常の防災意識や防災教育のあり方、国が作成した避難マニュアルの問題点を学びました。

 

各自治体では、陸前高田市・大槌町・遠野市などの市役所や小学校、資料館などを中心に取材。混乱を深めた当時の状況とともに、子どもたちへの心のケア、次第に国の予算が削られていく財政、普段から心がけるべき地域防災のあり方を学びました。

 

訪問中に偶然出会った住民のもとでボランティア活動を行なったグループも。被災地の状況、人々の心情を知れば知るほど、「私たちがただ撮影して記録している活動へのあり方について、これでいいのか」と、時に自問自答することもあったそうです。

 

大学に戻ると、三日間の聴き取りをまとめた8ページの取材記録を発行。

film 活動記録

 

さらに昨年12 月には、「まだまだ時間が止まったままの地域がある現状を広く知ってもらうため」に、写真展「FILMが写した世界」を開催しました。

filmが写した世界

 

FILM の取材記録の共有は、「とどけよう!!みんなのこえ!!」コンサートに厚みを持たせることになりました。ともに設立当時から双方による意見交換を行ってきて、今回で4回目の開催に。

 

毎年設定するテーマは、「つなぐ」(平成28年度)。

「震災についてあらためて考え、被災した人々や観客の皆様と、出演者の心を『つなぐ』コンサートにする」ことを趣旨とし、子どもたちにも理解しやすいような解説も加え、様々な楽器を用いた演奏や合唱が繰り広げられました。

コンサートの途中では防災について学ぶ時間も設けました。FILMの写真展も同時開催。

 

film 活動記録

さらに、「とどけよう!!みんなのこえ!!」で受け継がれている歌「私とあなたここに生まれて」があります。

「遠く離れた土地に住む私たちが歌っても失礼にならない内容を」と探し求めたところ、福島県在住の詩人 和合亮一さんの詩に出会いました。許可をいただき、一昨年に大学院を卒業した大森愛弓さんが曲をつけたもの。やわらかな言葉で綴られた詩には、ふるさとや大切な人、命の尊さへの深い思いが込められています。

 

舞台袖に流れたスライドショーに参加者の表情を演出するなど、柏原市内小学校の子どもたちも参加した全体合唱。過去から未来へとつなげようと、その歌声は大学のホール全体に響き渡っていました。

 

この活動を今後も後輩に受け継いでほしいと、代表のお二人は口にしていました。継続することの難しさはどんな物事にもつきまとうものです。そんな時に今回残した映像や記録が活かされるといいですね。(おおむら)