ワインやビールのように、誰もが気軽に楽しめる「蜂蜜酒(ミード)」を広めたい。
京都市中京区にある株式会社金市商店(京都市中京区)が、蜂蜜酒の醸造に力を入れています。
同社は安心・安全で高品質な蜂蜜の仕入れを行い、直営の販売店 miel mie(ミールミィ)を経営。自社商品を主力とする蜂蜜を、中京区にある本店および京都や大阪の有名百貨店で販売しています。
▲はちみつ専門店 miel mie(ミールミィ)
2024年3月、京都初となる蜂蜜酒専門の「京都蜂蜜酒醸造所」をオープン。10月26日には京都府産百花蜜を使用した「The MEAD 京都(ザ・ミード キョウト)」を醸造、販売しています。
京都では養蜂家が少なく、府内の百花蜜は貴重な存在。はんなりとした蜂蜜感を残した味わい。甘味とバランスの良さに加え、微発泡の感覚もある蜂蜜酒です。
▲10月26日に発売されたThe MEAD 京都(ザ・ミード キョウト)
さらにこのたび「The MEAD 桜(ザ・ミード サクラ)」の醸造を開始。この蜂蜜には大阪府柏原市産のさくら蜂蜜が使用されることになりました。
同社三代目、市川拓三郎さんは自ら「ハニーハンター」と名乗るほど、日本はもちろん世界中の養蜂家を訪ね、年間300種類以上の蜂蜜の品質を確かめ、納得したものだけを買い付け、販売しています。
▲株式会社金市商店 代表取締役の市川拓三郎さん。京都蜂蜜酒醸造所の前で
金市商店と蜂蜜酒の出会いは、2002年の視察で訪れたニュージーランド。養蜂場のオーナーから提供された蜂蜜酒の美味しさに感動し、帰国するとすぐ普及への取り組みを始めます。
「世界最古の酒」と称される蜂蜜酒ですが、当時は酒類を管轄する国税庁でも手続きが難航するほど、国内では認知されていませんでした。それでも2005年からは輸入を開始。ハリーポッターの小説や映画などで認知度が上がるにつれ、醸造への夢が広がりました。
2017年には京都の日本酒醸造メーカーへ委託醸造を開始。蜂蜜酒を語源とするハネムーンからその名をあやかったオリジナルミード「蜜月」を発売しました。
現在でも国内では20社しかない蜂蜜酒醸造は日本酒との兼業が多く、ついに自ら「京都蜂蜜酒醸造所」を立ち上げることに。専業としては5例目。今年(2024年)3月、丸太町にある築100年の京町家を改装しました。
▲イベントも可能な「ミードサロン」も併設。蜂蜜酒サーバーを設置する
蜂蜜酒を広く知ってもらうためのイベントも展開できるよう、「ミードサロン」も併設しています。(イベント時のみオープン)歴史を感じる京町家の雰囲気はもちろん、「お酒を飲んだあとに帰りやすい」ようにと、地下鉄丸太町駅からすぐ近くの場所の宅地を選びました。
醸造を支えるのは、篠田吉史さん(京都製麦研究開発株式会社 CEO/代表取締役)。
篠田さんは「この一杯の対価が農家に還元できることが大切」と考え、農業を起点とした地域経済の循環として、ビールやウイスキー原料である麦芽の国産化支援にも取り組んでいます。
▲醸造を支える篠田吉史さん
篠田さんの心強いサポートを得て、京都蜂蜜酒醸造所の醸造はスタート。500リットルの醸造タンクを4基設置しています。
オープンに先がけてクラウドファウンディングでも資金を募り、醸造した「The MEAD “First”」を返礼品として醸造しました。
「蜂蜜のように甘くはなかった」と市川さんは当初の苦労を振り返るも、蜂蜜の風味を確実に残した醸造を完遂。その後は国産の蜂蜜、さらには関西の自然の魅力が詰まった「The MEAD(ザ・ミード)」シリーズを展開しています。
市川さんは「京都は伝統と革新の町。新しい文化も受け入れる」と、蜂蜜酒に自信を持って届けられるよう、日々醸造へ注力しています。
▲500リットルの醸造タンクを4基設置する
蜂蜜酒の醸造には蜂蜜と水、そして酵母を用います。この日は、柏原市産のさくら蜂蜜を使用。
定期的にPH(酸性・アルカリ性の程度)、比重、濁度、酸素濃度を測っています。酵母が蜂蜜の糖を食べ、アルコールと炭酸ガスを生み出し、甘さが減っていきます。約3週間という短期間で発酵。醸造期間が比較的短いのも蜂蜜酒の特徴です。
▲柏原産さくら蜂蜜の発酵がこの日(10月24日)から。ワイン用酵母からアルコールと炭酸ガスが生まれる
今回、柏原市産のさくら蜂蜜を使用した理由について、「2025年の大阪・関西万博に向け、京都産とともに大阪産の蜂蜜酒も国内外の世界の人びとに堪能してもらいたい」と市川さんは今後を見据え、注力しています。
▲市川さんも自ら醸造。柏原市産さくら蜂蜜をタンクに注ぐ
背景には、地球温暖化による植生の変化や養蜂家の高齢化で、ミツバチと養蜂を取り巻く環境が厳しくなってきた現状があります。「自然の恵みである蜂蜜の未来を守る」という使命とともに、循環型社会への取り組みも同社では展開しています。
「The MEAD 桜(ザ・ミード サクラ)」は2024年12月~2025年1月販売を目標に、現在も醸造中。柏原市産さくら蜂蜜の香りや味わいがどのように感じられるか、今から楽しみな一品です。
(参考)
● 京都蜂蜜酒醸造所 Webサイト
https://kyoto-mead.jp