株式会社ヤスオカ 安岡 直樹社長にインタビュー
鉄を延ばす「圧延」や、線材を成形する金属加工の機械製造を手がける株式会社ヤスオカ。創業90年を迎えたものづくりの企業です。最近は特殊なレーザー加工によるチタン製ミニチュアマンホールも製造するなど、新規事業も意欲的に。
今回の「people」は、代表取締役社長の安岡直樹さんに同社の事業内容や歴史、ものづくりへの熱意をお聴きしました。
− 株式会社ヤスオカの主力事業について教えてください。
鉄を延ばす「圧延」設備の構築や、線材(針金やワイヤ)の直径を成型した「異形線」などの金属加工に用いる機械製造です。
金属に力を加えて変形させることを「塑性(そせい)」と言い、さまざまな産業分野の異形線材の開発となる塑性加工機の製造が、事業の約7割を占めています。
特に圧延を手がける事業所は日本では少なく、ニッチな分野であるのは弊社の強みだと考えています。
▲プロファイル研削盤(圧延ロールの外径面に形状を入れる為に使用する)
− 創業からの経緯を教えてください。
創業したのは1932年です。1961年には大阪市内で安岡圧延ロール機工業株式会社として設立しました。創業60周年(1992年)で社名を株式会社ヤスオカと改め、昨年(2022年)創業90年を迎えました。
− 柏原(国分東条町)に工場を構えたのはいつでしょうか。
1976年です。当時は一部移転だったのですが、圧延機製造は規模が大きいので、1982年には工場を増築する必要があり、さらに営業や他の生産活動の拠点も柏原に移しました。
▲2023年納品の圧延機ラインの一部(レベラー矯正機のユニット)
− 安岡さんが社長に就任した前後の会社について教えてください。
2014年に先代から引き継いだのですが、就任後の業績が2期連続赤字でした。大型機械の製造は納品までの期間が1年がかりとなることも多く、納品と発注の差が大きいのも理由なのですが、業務の運営にも改善の余地があると感じていました。
就任前はトップダウンで業務が進められ、当時は社員一人で一つの機械を担当するという状態で、社員は上からの指示を待って仕事を進めていく流れだったんですね。
私としては、社員ひとりひとりがそれぞれ考え、役割を持って仕事を進める形をとりたいと考えておりました。
▲納品へ向けて再三の注意を払う
− 社長就任後に実行したことは?
就任前の2000年に大きな問題が発生しまして、当時仕事の受注が重複し、少人数の現場ゆえパンクしそうな業務状況に陥ってしまいました。
さらに製造仕様の詰めが甘く追加作業が生じてコストが増加したんです。多忙を極めた割りに大きな利益につながらない結果となりました。
そんな経験がありましたから、私としては労働環境の悪化を避けるとともに、あらかじめ取引先との交渉を整理して収益をあげる工夫が必要と感じ、これまでの業務改善に取り組むことにしました。
− 具体的に工夫したことはありましたか。
私自身はほとんど現場勤務でしたので、それまで経営手法の実践に触れたことがほとんどなかったんですね。
近くの別会社の社長に紹介されてセミナーに通い、その後経営コンサルタントにも入ってもらいました。業務や組織体制の現状把握と分析をし、課題をあげ、具体的な数値目標の設定を掲げることにしました。
組織体制では社員全員で課題や情報を共有し、社員の意見も採り入れるようにしました。社員から意見が出なくなったら終わりだな、と思っていたので。3次元CADなどのIT化は社員の意見で導入に踏み切りました。
▲3次元CADも社員の声で導入
社員が主役となる各種プロジェクトをコンサルタントとともに進めてきた結果、業務改善の効果が見えてきました。OBのサポートも受け、機械設計技術者の資格取得にも積極的に取り組んでいます。組織体制の見直しと事業の再構築で、企業ブランディングによる利益向上をめざしてきました。
▲長く携わる社員も。技術の引継ぎも行っている
− 新型コロナの影響はいかがでしょうか。
2021年は設備投資の冷え込みから、機械装置の受注は壊滅的でした。それに加えて半導体不足に伴う電装品の長納期化が、更に経営を圧迫しました。2022年の発注は増えましたが、物価高、特に鉄やステンレスなど鋼材の価格上昇には頭を悩ませているところです。
▲写真右は圧延ロール用の軸。特に両端面のアヤメ出しには気をつかう
− 私たちが御社を知ったきっかけはTwitterや「をかしわらマルシェ」でした。
顧客に役立つ情報の発信、顧客側から見つけてもらうためのインバウンドとしてSNSを使っています。
このような営業は、社内プロジェクトで「インバウンド」と「アウトバウンド」に分けました。外へ出て営業に出る(アウトバウンド)担当を決め、うちの会社を知ってもらうインバウンドとしてSNSを使おうと、まず Twitter から2016年に始めました。
発信内容は担当者に任せ、<#企業公式が毎朝地元の天気を言い合う> というハッシュタグを用いて毎日何かつぶやくことで、企業間の広がりが大きくなったようです。
▲株式会社ヤスオカ Twitter
他企業とのユニークなやりとりが地元の方、特に「をかしわらマルシェ」実行委員の方の目に留まったんですね。それまでなかった地元出店のきっかけとなりました。現在は Instagram も開設しています。
Webサイトについても、社員から <『Webサイトがずっと同じ内容だったら、この会社は動いてない』と思われるので、動かした方がいい> という意見があり、顧客が弊社の事業を体系的に閲覧できるようにリニューアルしました。
● 株式会社ヤスオカ 公式サイト
https://yasuoka.co.jp/
(続く)