昭和13年の創業以来、多種多様な箱作りで、様々な企業や事業主から信頼を得ている巽製函株式会社。以前からお会いしていますが、訪問するのは今回が初めて。代表取締役社長の巽 教(たつみ おしふ)さんにお話をお聴きしました。
巽さんは学校を卒業してから、元々アパレルブランド・オックスフォードのデザイナーとして大阪本社に就職。コレクションでの東京勤務の経験で仕事の領域を拡大したあと、28歳のときに現在の道へ転身しました。
その当時直面した大きな仕事は、(株)マル勝高田商店の箱づくりでした。マル勝高田商店と言えば、三輪素麺(そーめん)の老舗。 素麺を入れる箱を製作していた業者が倒産し、困り果てていたマツ勝高田商店を救ったのが巽製函だったのです。
素麺が頻繁に出荷されるのは真夏。次から次へと納品のオーダーが来るなか早朝から晩遅くまで機械をフル稼働させ、高温の工場内で汗をかきながら箱を作り続けたことは、今でも忘れられない大変な作業だったそうです。
それでも確実に納品を続けたことで多大な信頼を得ることに。これをきっかけに業績も上がり、他の大手企業からの様々な依頼も舞い込んでくるようになりました。
その後、大きな分岐点となったのは平成16年のこと。 プロッターと呼ばれる、デザインとカッティングを行うシステムの導入でした。(写真上とトップ)
それまではデザイン会社との連携のなかで注文に応える製造業でしたが、プロッターの導入によって自社でデザインし、迅速に箱を作ることが可能となりました。平成18年には企画室を設置し、デザイナーによる発想と試作を重ね、顧客への提案を行って商品化するという構図ができあがりました。
大手企業を含め、取引の幅も広く、東京にも社員が駐在しています。営業においてはすべての社員がiPadを携帯。箱のイメージを伝えやすい3Dソフトを用います。このソフトでは細かなダンボールの切り目も断面で提示できるので、取引先も把握しやすいことが好評とか。
打ち合わせ中に取引先から注文がつくと、即デザイナーに連絡。小さな変更であれば、すぐに修正イメージが3Dで帰ってきます。デザインへの追求が、このような場面でも反映されているのですね。
また、紙を扱う会社の責務を果たすべく、リサイクルとしての社会貢献も。
例えば、ハグルマ封筒株式会社の封筒製作から生じる、余剰部分の再利用。本来なら廃棄されるものを大量に回収し、これらを同じ柏原市にある大和板紙株式会社が厚紙として再生。それらの厚紙を用いてデザインし、巽製函株式会社が封筒ボックスを作り上げています。
その他、中河内の函製造会社4社共同で「Team梅炭」のプロジェクト立ち上げにも。1日4トンもの廃棄物だった和歌山の南高梅の種を炭にし、 梅炭のパウダーを紙に混ぜた商品を企画・生産・販売することで 自然の循環システムをつくりあげました。梅炭の様々な効能も有効に活用されています。
元々デザイナーだった巽さんのセンスを活かし、ここ10年の間にどんどん新しい機械や人材を取り入れ、形や外観にこだわった優れものを生み出しています。紙にとどまらず、パッケージならどんな分野にも挑戦。iPhoneケースの製作・販売にも取り組んでいます。現在は4人のデザイナーを抱え、次のアイディア、プランに余念がありません。創造的に挑む姿勢が今後も非常に楽しみな企業ですね。
▲この竹に見えるものの紙製品(イベント用)
なお、前述のマル勝高田の三輪素麺が、さる4月23日にローマ法王に献上されたというニュースがありました。実は、その木箱の製作も巽製函によるものだったそうです。
http://www.miwa-takada.co.jp/news/201405roma/index.html