かしわらイイネットの「まちリポーター養成講座」も大詰め、「しゃべって書いて『古くて新しい地図づくり』柏原メモリーズ」というワークショップを実施しました。
これは、参加者の皆さんが実際に町へ出て出会った人々から、柏原の思い出や町のいい場所・長所を聴いて回る取材体験と、町への想いを皆で話し合って共有するものです。
最初に、講師である編集者・狩野哲也さんから、まずは地域の人々から聴き取るときの姿勢(ネガティブ要素は極力排除する、相手が話しやすい環境のもとで聴く)などをレクチャーしていただきます。
その後、実際に約2時間、参加者それぞれが町に出て、あらかじめ用意された地図だけを手に、思い思いに動きまわりました。
今回の参加者の大半は、もともと柏原生まれでなかったり、市外在住だったりします。
基本ルールとしては、1)「あの神社にはこんな歴史がある」という予備知識を入れないで動く。2)柏原の町をある程度知っている人は、これまで踏み入れたことのない場所へ行く。
したがって、地図以外の内容は、頭のなかを真っ白の状態にして、動き回ることになります。
私の場合は2)にあたるので、これまで踏み入れたことのなかった、30年以上ある駅前の小さな喫茶店で、店主さんとお話したり、実際に利用されているのか知りたかった小さな旅館を訪れてみました。
例えば、喫茶店では、コーヒーをいただきながら、かつて大手スーパーがあった頃の思い出を聴いているうちに、メニューに「生ゴーヤジュース」とあることを発見。この辺りの喫茶店ではないように思います。これって今飲めるんですか?と聞くと「夏限定やけど、りんごを絞ったのを入れてるんよ」と、教えていただきました。
取材時間を終えて、再集合。それぞれが自己紹介しながら、町の人々から聴いてきた声を付箋に書いて、地図に貼っていきます。
「デザインショップの店主から、自分だけの柏原散歩コースを教えてもらった」
「商店街の通りに、不思議なフリーマーケットがある」
「あの自転車駐輪場で、かつてあった映画館の場所を教えてもらった」
「昔は駅前から山に向けて桜並木があって、その名残りが今も残っている」
「桃の木を植えていた場所があった」
などなど、意外なほど、生の町の人々の声が集まって、一般的なガイドマップにはないような情報で地図が埋まっていきました。(写真はその一部です)
柏原って、奈良に近く、大きなショッピングモールもありません。山や川に囲まれ、それ程目立たない場所のように感じる人も少なくないでしょう。
しかしながら、取材する人の視点が変わると、関心を持つ場所が他の人と違う、また、地域に住んでいる人だけが知っている小さな知識が実は新鮮である、さらに、町の思い出と現在の光景を対比することで新たな風景が呼び起こされ、追体験と実体験ができる、など、様々な楽しみ方を得られることがわかりました。
変な先入観にとらわれず、自ら町の風景を掘り起こしていくことで、小さくても町の新たな発見が得られる喜びは、何だか頭のなかがリフレッシュされる思いでした。これからの取材のあり方として、非常に参考になるものでした。
このワークショップは3月28日(土)にも行います。ライター、リポーターを志している方にとって、楽しく取材する喜びが得られますので、取材手法に行き詰まっている方がいらっしゃったら、一度ご参加ください。