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素材から焼成まで。タイルを「つくること つかうこと」の体験から学ぶ

住宅の浴室や流しなどに多く使われるタイル。

現在では生活の身近にある存在ですが、このルーツは古代オリエントまで遡るそうです。当時は、素焼きでつくった煉瓦が建築に使われ、建物を彩る焼き物として、手づくりタイルが編み出されました。

そんな手づくりタイルの制作体験をしてもらおうと、12月4日・5日にワークショップ「つくること・つかうこと」が行われました。会場は大正通りポケットのBed&Bicycle(共催)。

つくることつかうこと

今回つくるのは、古代オリエントの人びとが作っていた「クレイぺグ」。円錐形の焼き物です。頭部を着彩し、神殿など特別な建物の壁に積み上げることで幾何学的な装飾を施していました。

材料に欠かせないのが土。粘土の精製です。今回、それを柏原の土で作る試みを兼ねたのもテーマのひとつでした。

12月4日から始まったワークショップは、その素材から作り上げることから始まります。

実際は地面を掘り集めた粘土質の部分を天日乾燥させて砕き、水を混ぜつつ、細かなごみや空気を取り除いてから粘土として練り上げる、という工夫を重ねます。

クレイペグ
▲粘土質の素材から円錐状に成形した

 

今回のワークショップでは一部省略し、素材からひとつひとつ円錐状に成形、乾燥させてから七輪で焼きあげました。初めから直火に当てると割れてしまうため、少しずつ近づけるなど丁寧に仕上げていきます。

クレイぺグ クレイぺグ
※画像を一部ご提供いただきました

 

「最初はグレーだった素材がきれいなオレンジ色に染まっていく様子に感動した」と、参加者から驚きの声も。

クレイペグ

 

翌朝、焼成したクレイぺグを積み重ね、Bed&Bicycle前につくる池での施工体験を実施しました。色にムラがあっても、重ねてみると味わいある色合いに。

クレイペグ
Bed&Bicycle前につくる池での施工体験クレイペグ

実は今回の素材の一部には、池となる場所から掘られた土が含まれていました。池の淵が手づくりタイルで装飾される演出も。

このような天然の施工によって、遥か昔、古代オリエントの人たちは建物を装飾していたのですね。

 

ワークショップを企画した、京都芸術大学芸術学部 空間演出デザイン学科 柏元京さんです。

つくること つかうこと 柏元さん
▲ワークショップ主催の柏元さん。焼成前のクレイペグとともに

 

「日本のタイルの始まりは、鎌倉時代に禅宗が伝わるのと同時に入ってきた敷瓦と言われています。その後、西洋文化とともに輸入されたのが現在のタイルの原型。釉薬(ゆうやく)の均等な塗りとともに、今では工場で大量生産できるまで発達し、建築装飾の向上につながりました」

釉薬・・・表面を覆うガラス質のこと。古代エジプトではピラミッドのなかから世界最古の施釉したタイルが発見されている

一方で、大量生産ゆえ負の側面もあると、柏元さんは続けます。

「ある時、JIS(日本産業規格)に合わないタイルの多くが廃棄されるという事実を知りました。私たちが直接廃棄タイルを減らすことはできませんが、手づくり体験を通して、私たちの生活に身近なタイルを『つくること・つかうこと』の考えを見直す機会となればと、ワークショップを開きました」

大学にある土などを試した経験から、今回の土は粘土質が少なく、素材づくりがやや難しかったことも実感できました。

つくること つかうこと 柏元さんと参加者のみなさん
▲ワークショップに参加した皆さん

 

ワークショップは卒業制作の一環で、これを踏まえ、12月13日〜19日にはタイルギャラリー京都で「タイル産業から考える「製品」のカタチ」として、タイル産業の現状も捉えた展示会も開きました。

1月22日(土)23日(日)には「土といきる」を、京都市左京区の喫茶ギャラリー「さろん淳平」で実施します。自然の土からつくることなどに関心のある方はご覧ください。

土といきる 土といきる