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自然から持続可能性を考え、課題を共有する「自然環境保護フォーラム」

100年先の子どもたちに柏原市の自然環境を残すため、課題を共有する「自然環境保護フォーラム in 柏原」が2月4日、リビエールホールレセプションホールで開かれました。主催はかしわら森の会。

 

自然環境保護フォーラム

 

基調講演として、大阪大学大学院工学研究科 招聘(しょうへい)教員の畑中直樹さんより、<「持続可能性(サスティナビリティ)」は森から>と題する話題提供がありました。畑中さんは学生時代から30年以上、自然環境とともに経済的な仕組みづくりにも携わった豊富な経験を持っています。

海水温の上昇などをデータや図で紹介し、現代社会で顕著な懸念は気候変動の悪化であると指摘。異常気象によって経済や雇用が不安定となり、難民、希望を失う若者が増えると結果的に政治の不安定を招く。地域レベルでも地球レベルでも、環境問題から文明危機に至る結果を人類は繰り返してきた、と説明がありました。

 

自然環境保護フォーラム
▲畑中直樹さんの講演は地域から地球規模の内容に及んだ

 

環境問題の解決に向け、パリ協定で2050年までのカーボンニュートラル(脱炭素)がうたわれているが、畑中さんは「2030年までの10年が勝負」と強調。世界的には建築における材料から解体までの循環、脱プラスティックの動きが加速しつつあり、今後は大企業だけでなく中小企業にも及ぶだろう、と述べました。

 

持続可能な地域づくりに大切なポイントは、「SDGs・地域経済循環・関わり」の3点。

「SDGs」では17の目標があるが、環境→社会→経済の順に支える構造として、経済が安定するためにも環境の安定が必須。また17目標は1セットであり、一部の目標だけをゴールとするのではなく、統合的な解決が重要である。木材利用は多くのSDGsに関連していると提示。

「地域経済循環」については、柏原市の所得循環構造で市外への支出が多い傾向にあると分析し、適正価格の設定や地域循環の構造を説明。参考事例として、滋賀県における「山主・生産者・消費者」の三方よしの仕組み、Kikitoプロジェクトを挙げました。

 

自然環境保護フォーラム

 

「関わり」としては、伝統文化・祭が、ヒト・モノ・カネで持続可能な関わりの維持を担っている側面を参考にし、環境保全の担い手にも地域と地域外の連携、人材育成が必要と説きました。

その上で、短期から中長期的な視点に立った大きな目標を共有し、脆弱性にも配慮しつつ、互いの信頼関係を築いた自然環境保護活動が求められる、と締めくくりました。

 

第2部では、柏原市の各団体の事例報告。

 

自然環境保護フォーラム

 

かしわら森の会では、昆虫探しや自然観察などを通した子どもたちが自然に親しむ活動、森林ガイド養成、また玉手山公園での生態遷移の実験として「いぶらの森」における里山の森づくりの実施。

かしわら水仙郷を育てる会では、50年前にさかのぼる活動のきっかけがあり、高尾山のぶどう畑だった場所にスイセンを植えて自然や人とのふれあい、道標や山道など周辺エリアを整備。2月のウォークイベントではおもてなしサービスも。

スタートしたばかりのオガタの森は、土地所有者の立場で活動。土地境界や不法投棄の問題を挙げ、をかしわらマルシェやゲストハウスBed&Bicycleとの連携で「暮らしと森のつながりを感じる」仕組みづくりを展開。

循環型社会にアートの概念も採り入れるイエロー・ライン・プロジェクト。「菜の花・ひまわり・河内木綿」を春夏秋冬を通じて地域とつながる活動として、大阪教育大学前駅付近の畑やふれあい館オガタで実施。

 

自然環境保護フォーラム

 

アドプトリバー原川は毎月第2日曜日に清掃活動。平成21年から続く廃棄ごみの回収活動で次第にごみの量も減り、原川に戻ってきた動植物の事例とともに通行人とのコミュニティ形成も。

柏原市産業振興課からは、柏原市域の3分の2を占める山間部でぶどう畑が減り、放棄地が増えるとともにナラ枯れや竹の増殖の課題、また森林環境贈与税や整備計画、市民へのアンケート結果などが報告。

 

時間の関係で第2部は事例報告が大半となりましたが、パネラーの畑中さんからは「これだけ多様な活動が柏原市にあるのは素晴らしいことで、互いに連携しつつ未来へ繋げていただきたい」とエールの言葉が贈られました。