Interview

伝統企業で新たな挑戦。刺子生地の強さをアクティブに伝える(九櫻刺子・前編)

九櫻刺子 桂恵美さん

株式会社九櫻 繊維事業部 プロジェクトリーダー 桂恵美さん

武道の100年企業が新たな100年へ。かしわらイイネットでは、2021年に柔道衣などを世界に送り出す株式会社九櫻の歴史と新たな企画を取材しました。(次の記事も併せてご覧ください)

「武道を越えて新たな世界の九櫻へ」100年企業が次の100年へ挑む

今回は「People」で同社のプロジェクトリーダーの桂恵美さんにスポットをあて、インタビューを試みました。前回聴けなかったエピソードやその後の繊維事業部の体制、桂さんの仕事へ向かう姿勢なども取材しています。(2023.02.10 最終更新)

 

武道の100年企業で繊維事業部が立ち上がるまで

ー 桂さんはもともと会社ではどのような業務をされていたのでしょうか。

入社して大阪支店のフロント(営業事務)を担当していました。

 

ー 繊維事業部が立ち上がるまでの経緯をお聞かせください。

弊社は2018年に創業100年を迎えました。100周年の記念パーティーで「次の創業200年に向けて何か新しい事業を目指す」という三浦正彦社長の方針が示されたのです。具体的に何ができるか、社長は多くの方々にヒアリングを行いました。

私にも尋ねられましたので、自社の強みのモノを前面に出す、武道以外のジャンルで発信する商品展開、それらを考えると「生地じゃないでしょうか」と。

柔道衣で使われる刺子生地は一般に出回ってなく、生地として使用しづらいという懸念はありました。それでも「丈夫で長持ちする特徴を活かし、伝統ある生地を世界へ発信していこう」という明確な方向性が社内で定まり、この繊維事業部が立ち上がったのです。

 

刺子生地
▲強靭でありながらもしなやかで、あたたかみのある風合いの刺子生地

 

 

広がる刺子生地の可能性と挑戦

ー 初めてヒットした商品を教えてください。

パーカーですね。最初にTシャツを生産したのですが、その直後にパーカーとブルゾンの開発を同時にスタートしていました。パーカーは刺子生地のみ使用のこだわりある商品になっています。

九櫻刺子パーカー

▲ 九櫻刺子パーカー

 

 

袖の部分などにリブが付いて伸び縮みする生地が主流なのですが、着づらくてもあえて刺子生地でやってみよう、と。弊社のパタンナー(デザイナー)の意見も取り入れています。

そのあとに生産したバブーシュは、柏原市のふるさと納税で人気が高いですよ。

 

九櫻刺子バブーシュ▲ 九櫻刺子バブーシュ

 

 

ー 外部からは「アパレルの分野に進出した」という見方もありそうですが。

アパレルに特化したわけではないですね。刺子生地の強さと美しさを表現するのが目的ですから。弊社では、柔道衣を生地から裁断、縫製という一貫生産を実施していますので、サンプルを自社で制作することが可能です。

その強みを活かしてTシャツを作るのはアイデアのひとつでした。最初に生産したのがたまたまアパレル関係の商品だった、ということです。

 

ー そう考えると、刺子生地で生産できる商品は他にもありそうですね

実は入社して以来、柔道衣に使われている刺子生地を触ったり見たりしているうちに、例えばクッションやラグなどに使えるなって発想はあったんです。

ただし、作りたいと思っても実行まではできなかったので、この繊維事業部が立ち上がってからは、さまざまな挑戦ができると考えています。

 

九櫻 織り機
▲同社の工場には古くから使用している織機も。縦糸と横糸の通し方を考えた調整を施し、道衣の強度基準を満たした刺子生地が織り上がる。独特の風合いの源で、そこには長年培われた職人の思考と技術がある

 

 

繊維事業部の設立直後にコロナ禍へ

ー 桂さんがこの業務を担った頃の話をさらに聞かせてください。

今の時代、女性が前へ出て仕事をする流れになってきていると考えています。社長から「桂が担当するように」と言われたときには、創業100年超えた老舗の企業で何か新しいことにチャレンジできる。リニューアルした九櫻に変わっていけるのではないかという可能性を感じました。

社長の一言がきっかけで、商品の企画から実行、着地点までを考えた仕事ができるようになったんです。

 

ー 実際に繊維事業部が立ち上がった当時は

本社の総務部で、デスク1つに電話1本をひとりで間借りするような状況でした。周囲からは「桂はいったい何の仕事をしているのだろう」と思われていたようです。

営業先でも社名で柔道衣の理解は得られるのですが、直接会って生地と商品サンプルを持ち込まないと、繊維事業部の企画はすぐ把握していただけないことが多かったですね。

 

ー コロナ禍の影響はあったでしょうか

コロナ禍直前の2020年2月には、すでに繊維事業部が立ち上がっていたんですよ。
「これから頑張ろう」という時期の4月に緊急事態宣言が出て何もできない。外にも出られないという状況で。「もうダメかも」と悲観したこともありました。

さらに会社全体で大きな打撃を受けたのは、本来の柔道衣など武道に関する商品生産でした。試合や大会、学校のクラブ練習がことごとく中止になりましたから、受注が大幅に減ってしまい大変な状況でした。

 

ー かなり深刻な状況だったのですね。

はい。そんな時期に、柔道家でメダリストの篠原信一さんへ刺子生地のマスクをプレゼントしたんですね。篠原さんから絶賛の言葉をいただき、メディアにも取り上げていただきました。それがひとつの転機となりました。

 

九櫻刺子 柿渋染めマスク
▲柿渋染めマスク

 

販売方法は、当初から繊維事業部の商品の店舗販売は念頭になかったので、自社のECサイトを立ち上げました。Makuakeなどのクラウドファウンディングサイトの活用も大きかったです。

九櫻刺子 オンラインショップ
▲九櫻刺子オンラインショップ(https://kusakurasashiko.shop-pro.jp/

 

後編に続く

 


 

※2月9日現在、Makuakeで「刺子生地によるサウナポンチョ」が展開されています。下記ページでご覧ください。

● サウナポンチョの常識を覆す。刺子生地を使う贅沢な1着をあなたにhttps://www.makuake.com/project/kusakurasashiko-15/