2月としてはめずらしい長雨となっています。大和川の流れる柏原市では、雨が続くと河川の増水に注意が必要。そのような防災・水害対策として、大和川の流域治水(りゅういきちすい)の啓発イベントが、2月17日にイオンモール大和郡山で開かれました。
大和川は奈良盆地を上流とし、県内156の支川(しせん)が1級河川の大和川に合流しています。
奈良県から流れ出る水量は、亀の瀬の狭窄部(きょうさくぶ)に集中することから、過去にも洪水が発生してきました。近年で最も被害のあったのは、昭和57年8月の台風10号による洪水。王寺駅一帯が浸水し、鉄道を含め周辺地域に大きな被害をもたらしました。柏原市をはじめとする大阪府でも床上・床下浸水が起きています。
これをきっかけに昭和58年から奈良県では国に先がけて、県全体で治水対策を始めました。現在では国ととともに流域治水を行っています。流域治水とは、河川だけでなく「流域」全体であらゆる治水を行うこと。企業や市民にも協力を得て、洪水対策を実施しています。
⚫︎ 流域治水プロジェクトとは(国土交通省 大和川河川事務所)
https://www.kkr.mlit.go.jp/yamato/about/project/index.html
例えば、市街地で大規模な土地開発を行う場合は、あわせて防災調整池(雨水を一時的に貯める設備)の設置を義務づけています。
今回イベントを実施したイオンモール大和郡山の敷地は約16万6,000平方メートル。ここの地下には深さ2m、面積8,000平方メートルの調節池があり、ほぼ同規模の調整池とあわせて総容量1万6,000トンを貯水することができます。25mプールに換算すると約30杯分とのこと。
このような調整池だけでなく、堤防の整備や河底の掘削はもちろん、各家庭においても雨水の活用も勧めるなど、一気に起こる増水を防ぐ対策を県の流域全体で行なっています。
当日の啓発イベントでは、自分の住むエリアが大和川のどの流域にあたるかをPC画面で確認できるブースや、奈良盆地の高低差とともに貯水池やため池で水害を防ぐ仕組みを示す模型体験、映像やパネル展示などで、来訪者に啓発していました。
▲デジタルマップで自分の居住地付近の河川情報、大阪湾までの流路がわかる。上の画面はイオンモール大和郡山付近
▲高低差のわかる奈良盆地の模型。大雨による流入や貯水池などの治水、亀の瀬の狭窄部を表している
▲当日は大和郡山市長も訪問。大和川河川事務所長が案内
気候変動に起因するものか、ここ10年ほどの豪雨災害の増加を示すパネルもありました。100%の水害対策はないかもしれませんが、前例や地理的要因を踏まえた大和川上流部における流域治水の先端を知る機会となりました。
今回展示された流域治水の概略を網羅したパンフレットは大和川河川事務所が制作しています。関心のある方はお問い合わせください。
(2024.02.21 18:15 一部加筆しました)