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「亀の瀬地すべり歴史資料室」が移転。新たに鉄道ジオラマや写真で可視化も

亀の瀬地すべり歴史資料室

国土交通省大和川河川事務所では、亀の瀬(柏原市峠)にある地すべり工事対策資料室を新たに建設し、「亀の瀬地すべり歴史資料室」として3月29日に移転、リニューアルオープンします。そのオープンに先がけ、3月23日には関係者向けの内覧会が開かれました。

新しい歴史資料室は旧施設から北に位置し、約7,000平方メートルの敷地を整備して建築されました。建築面積は約250平方メートル。3室で構成するコンテナ式の展示施設です。土産物販売コーナーも新設し、写真の多用や鉄道ジオラマの活用で、地すべりの歴史や工事対策を可視化し、よりわかりやすく理解できる工夫が施されています。

 

亀の瀬地すべり歴史資料室
▲リアルな鉄道ジオラマで大人も子どもたちにもわかりやすく

 

内覧会には冨宅正浩 柏原市長、木谷慎一郎 三郷町長、松川哲也 柏原市マイクロツーリズム推進協議会副会長が来賓であいさつし、国土交通省大和川河川事務所 山本浄二所長から、これまでの経緯説明と施設の案内が行われました。

亀の瀬地すべり歴史資料室
▲(左から)山本浄二 国土交通省大和川河川事務所所長、冨宅正浩 柏原市長、木谷慎一郎 三郷町長、松川哲也 柏原市マイクロツーリズム推進協議会副会長

 

山本所長は「地すべり対策工事と亀の瀬の歴史を、大人から子どもまでよりわかりやすく理解していただくため、鉄道やジオラマを入り口に興味を持ってもらうように設計した」とあいさつ。鉄道ジオラマの除幕式も行われました。

亀の瀬地すべり歴史資料室 亀の瀬地すべり歴史資料室
▲明治の鉄道トンネル(下写真左)から現在まで時の流れを一つに表現。昭和7年の地すべりで迂回した関西本線、大和川を斜めにかかる第三大和川橋梁・第四大和川橋梁(第四大和川橋梁はその特殊な構造から土木遺産に認定・上写真奥)もリアルに制作

 

 

国土交通省では、生活基盤となる公共土木施設を見学し、参加者が理解を深める「インフラツーリズム」に平成26年度から力を入れています。さらに令和5年8月には「インフラツーリズム魅力倍増プロジェクト」のモデル事業として、「亀の瀬地すべり対策工事」が全国3カ所のなかの1つに選出されました。

以降、同プロジェクト事業として、デザイナー、設計、展示、旅行、賑わいづくりなど各分野の有識者で構成する会議や市民とのワークショップを重ね、三郷町を結ぶ管理用通路の整備や、歴史資料室の新設、ガイドツアーの充実などが行われる運びとなりました。

資料室については昭和61年築の資料室が老朽化し、多くの見学客を受け入れるには手狭となったのも、理由の一つでした。

 

亀の瀬地すべり歴史資料室
▲ロゴやマーク、キャラクターも一新した

 

新たな歴史資料室は1階建で、旧大阪鉄道の列車を意識した施設設計。鉄道ジオラマや土産物コーナーを入り口部の展示室1に配置し、次の2つの展示室に「歴史」「対策工事」「流域治水」などで構成。

 

亀の瀬地すべり歴史資料室
▲亀の瀬の駅名表示もある細かな鉄道デザイン。晴天ならテラスとして過ごせる空間にも

 

「歴史」では、地すべりによる災害や鉄道の歴史を、時系列に写真配置。文字は大きく、端的にまとめられているのも特徴です。

亀の瀬地すべり歴史資料室亀の瀬地すべり歴史資料室
▲多くの写真で可視化し、漢字にふりがなも

 

残存する明治36年、昭和6〜7年、昭和42年などの地すべりの記録写真が解説文とともにフロア全面に展示され、昭和の貴重な8mm映像なども場内に流れています。

平成21年に工事中の発見が明らかになり、現在は柏原市の文化財に指定された明治の鉄道トンネル(亀瀬隧道)の遺構についても大きく写真解説。(同トンネルは、日本遺産「龍田古道・亀の瀬」の構成文化財のひとつにもなっています)

 

亀の瀬地すべり歴史資料室
▲旧大阪鉄道亀瀬隧道の説明も大きく表示

 

 

昭和37年から国をあげての大規模工事である「地すべり対策工事」の展示も、地すべりのメカニズムとともにビジュアル重視で。

亀の瀬地すべり歴史資料室
▲深礎工(しんそこう)や集水井(しゅうすいせん)など工事の用語もよりわかりやすいグラフィックで

 

「土をとりのぞく」「水をぬく」「土を止める」という簡潔な言葉を前面に。集水井(しゅうすいせん)による排水、地すべり抑止など専門的な工事説明は後から読めるようにもなっています。

亀の瀬地すべり歴史資料室
▲専門的な工事対策も柔らかな表現で伝える

 

土を抑止するための杭、深礎工(しんそこう)は、資料室建築途中にその頭の部分を覗かせたことから、建物外のテラス部分でそのままリアルに体感できます。これもユニーク(当日は雨天だったので撮影ができていません。オープン後にご覧ください) ※追加しました2024.03.29

 

亀の瀬地すべり歴史資料室
▲亀の瀬の地すべりの要因となった地質の解説

 

亀の瀬地すべり歴史資料室
▲大きな窓から外の自然の風景も視界に広がる

 

亀の瀬地すべり歴史資料室
▲土を抑止するための杭、深礎工は駐車場奥にある(実物)。右奥に見えるのは明神山

 

その他、奈良県を中心とする流域治水の展示やワークショップ可能なエリアもあり、3室の資料室を移動しながら楽しめるように設計。

おみやげコーナーは柏原市マイクロツーリズム推進協議会が担当。現在は日本遺産推進協議会に認定された品を中心に設置されており、今後の販売を充実させることとなっています。

 

亀の瀬地すべり歴史資料室 亀の瀬地すべり歴史資料室
▲おみやげ販売コーナー

 

以上の展示に加え、実際にトンネルに入りインフラを体感するガイドツアー(※事前予約制・下にサイトリンクあり)も行われ、より理解を深めることが可能な施設となっています。

今後は令和7年度に完成する三郷町のかわまちづくり「川の駅」を「亀の瀬東口駅」、今回の新資料室は「亀の瀬西口駅」と位置づけ、管理用道路とともに人の往来を活発にする方針。

大和川河川事務所山本所長は、「日本でも有数の地すべり対策工事は外国からも注目されており、亀の瀬インフラツーリズムの魅力発信は国の内外を問わず展開したい」と、今回の資料室移設によって魅力倍増に力を入れるとしています。

 

亀の瀬地すべり歴史資料室
▲駐車場は普通自動車で30台まで。バイク・自転車駐輪スペースあり

 

(※初回更新日:2024.03.28 / 最終更新日:2024.03.29  16:24  オープン時の写真を追加・差し替え) 

 

名称 亀の瀬地すべり歴史資料室
所在地 柏原市峠 亀の瀬地すべり対策工事敷地内
受付時間 9時30分〜16時30分
休館日 月曜日・年末年始
TEL. 072-978-8165
アクセス
参考リンク ※ インフラツーリズムガイドツアー(事前予約制)専用サイト

https://kamenose-infratourism.jp/guidetour

その他 駐車場(普通自動車最大30台まで)

※プロジェクションマッピングは体制見直しのため休止中です(2024年3月28日現在)