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難処理古紙から本の装丁デザインに(大和板紙株式会社)

大和板紙

インターネットやSNSの普及によって、新聞・出版業界などでは「紙」の存在が薄らぐ傾向にありますが、ある統計データによると、現在でも「書籍読者層の80%は紙書籍を読んでいる」という結果も出ています(2016年 MMD研究所データより)。

 

古くから紙は私たちの生活のなかにあり、現在でも記録や梱包などに欠かせない存在です。そんな紙にとって、環境社会のなかで度々取り上げられる課題が、不要となった紙の使い道。そこで、不要な紙を積極的に再生し、ひとつの循環型システムを構築している企業、大和板紙株式会社営業部開発課長の石田さんにお話をお聴きしました。

 

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▲取材の際にお伺いした会議室の机も「板紙」でつくられている

 

大和板紙株式会社では、単に古紙を再生するだけではなく、酒パックや化粧品の箱など一般的に「難処理古紙」と呼ばれる、再生の難しいフィルムが貼られたパッケージ(フィルム加工紙)も、積極的に再生化への取り組みを実施しています。

 

さらに独自に考案した「循環型リサイクルシステム」によって、フィルム加工紙の損紙から再生したボール紙やダンボールを、元のメーカーの中箱や外箱に使用するようなリサイクルを、メーカー側へ提案。

※参考リンク
循環型リサイクルシステムのご提案」(大和板紙ウェブサイト)

 

このような再生した板紙を製作するなかで、大和板紙ではデザイナーの使用まで考慮した様々な製品を生み出しています。

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なかでも、現在注目されているのが「ゆるチップ」と呼ばれる板紙。こちらは、新聞古紙・雑誌古紙を主体とする「チップボール」を元に、デザイナーのコズフィッシュ祖父江慎さんがプロデュース、製品化したものです。

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▲「ゆるチップ」 現在、もも・くさ・そら・ゆきの四色

 

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▲チップボールのサンプル

 

そもそも、「デザインのひきだし」(デザイン・印刷・紙・加工の実践情報誌)を編集・発行するグラフィック社からの取材がきっかけに祖父江さんの目にとまり、「週刊マンガや雑誌などに使われている薄色紙(せんか紙)のイメージ」を再現した、新たな板紙が開発されました。

 

事前に表面の色テストを数色行って方向性を確認したあと、最終的な製品完成に至っては、祖父江さん自身、大和板紙の工場での立会いのもと、色や風合いなどを決定。今後、様々な色の板紙も出せるようにと、親しみやすさのある「ゆるチップ」というネーミングまで関わられました。

 

「ゆるチップ」に限らず、先述のリサイクル原料となる古紙によって、板紙に映る細かな柄(点)の部分は異なるそうで、そのあたりまで検討、考慮した風合いが「ゆるチップ」にも 現れているそうです。

 

実際、今回の「ゆるチップ」は、昨年(2015年)開催された「スポ根展」(アニメ制作会社「トムス・エンタテインメント」50周年記念の展示会) において発行された冊子の装丁、また、現在東京で開催中の「スヌーピーミュージアム」における紙デザインにも用いられているそうです。(いずれも祖父江慎さんが展示会のアートディレクションを担当)

 

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▲スポ根展の冊子。装丁デザインでは、スポ根アニメならではの「汗」も祖父江氏が再現。

 

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▲東京で開催されている「スヌーピーミュージアム」にも「ゆるチップ」

 

大和板紙株式会社では、様々なデザイナーの方に製品を実感してほしいと、「ゆるチップ」を含めた様々なサンプルを「デザイナーズキット」として提供されています。(登録が必要です)興味のある方は、一度お取り寄せしてみてはいかがでしょうか。

 

ちなみに、今回お話をお聴きした石田さん、メビック扇町で毎年開催される「わたしのマチオモイ帖」(個人が町への思いを綴った冊子を展示)においても、自社製品が装丁に使用されていることを後から知るケースがあるそうです。 (加工されないそのままの状態であれば、見て判別できる、とのこと)

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▲明るく応対していただいた大和板紙株式会社の開発課長、石田さん

 

なお、会社の紙製造への姿勢や工程、製品に至るまで汗を流して働く人たちの姿を広く知ってしていただこうと、大和板紙では随時、工場見学を開催しています(※ただし、グループでの事前申込が必要)。

小学校の社会見学では、子どもたちに牛乳パックを持ってきてもらい、そこから新たな紙が生まれる様子を実感できる企画もあり、紙をめぐる環境学習にも適した見学ができる内容となっています。

 

大和板紙株式会社
〒582-0004 大阪府柏原市河原町5番32号
TEL.072-971-1445